講義日誌 yasuyuki shinkai

明治学院大学文学部フランス文学科 慎改康之

『ミシェル・フーコー 自己から脱け出すための哲学』(岩波新書)

10月下旬に、拙著『ミシェル・フーコー 自己から脱け出すための哲学』(岩波新書)が刊行されます。

今年1月に出版された『フーコーの言説』(筑摩選書)がフーコーを読み直すための書であったのに対し、新著は、これからフーコーを読み始めようとしている読者に向けられた入門書です。そのため、前著とは力点の置き方をずらしつつ、基本的な事柄を簡潔に紹介することを主眼としています。

おおざっぱに言って、フーコーの研究活動を特徴づけるものとして以下の三つを挙げることができます。
- 歴史への問いかけによる自明性の問題化
- 研究の軸や対象領域の絶えざる変化

- 主体と真理の関係をめぐる問いの恒常性

筑摩選書では、フーコーの言説のうちに一見して明らかに読み取ることのできる第一の特徴をある程度まで了解済みとした上で、残りの二つ(絶えざる変貌と一貫性)を互いにどのように関係づけることができるかという問いを立てました。そしてその問いに答えるために、フーコーのテクストを頻繁に引用して出典を明記し、オーソドックスなやり方(大学での論文指導で指示しているのと同じやり方)での論述を試みました。

これに対し、今回の岩波新書では、フーコーにおいて基本的な最初の二つの特徴に焦点を定めながら、彼の主著の内容を時代順に解説していきました(「主体と真理」をめぐる問題については、各章で必要に応じて触れた上で、終章において簡略にまとめるにとどめました)。なお、こちらでは、フーコーへの入口として役立つと思われる伝記的情報や時代背景などにも適宜言及し、巻末には年譜や参考文献表も付してあります。

 『フーコーの言説』はフーコー再読のためのたたき台として、そして『ミシェル・フーコー』はフーコー入門のための踏み台として、役立ててもらえたらうれしいです。

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